進学先に考えている方へ

2023.05.10 担当教授 髙田 滋

当研究室では,分子運動論とそれと密接に関係する流体力学的な話題を取り上げて研究しています.従来の流体力学だけではうまく説明しきれない学問上の境界領域が主なターゲットです.専門書や教科書で紹介されるような蓄積効果がある仕事を残していくことが目標です.私たちの研究分野に無理なく参入するには,流体力学,気体力学,熱力学,平衡統計力学,微積分学,線形代数の標準的な学部までの教程を習得しておくことが必要になるでしょう.勉強熱心で骨のあるひと,大歓迎です.

研究でどんなアプローチをとっているか,どの程度のアクティビティがあるか,どんな人たちとの接点があるかなど,私たちの研究活動についてより具体的なイメージをつかみたい方は,このホームページの研究集会やセミナーの記録,私(髙田)の個人ホームページをご覧いただくとよいでしょう.大まかに言って,私たちがやっている類の研究は,欧州では応用数学者がやっていることが多いです.

さて,当研究室への配属が決まったら,まずは研究を楽しんでください.きっかけは何であれ,やり始めてみると面白いことはいろいろと見つかるものです.大学を卒業してすぐ社会に出ず,大学院への進学をあえて選ぶからには,ぜひ,その期間を人一倍楽しみ,打ち込んでほしいと思うのです.進学率が高くなったせいなのか,進学時に「ひとつの(大きな)選択をした」とはっきり意識している人は少ないように感じています.大学院は(勉強ではなくて)研究をするところだということははっきりと認識しておく必要があります.研究というのは未知の事柄に取り組む業ですから,学生か教員かに関係なく,皆に平等に「最初の発見,解明」の機会が与えられます.自分の研究課題に没頭し,掘り下げたもの勝ちです.「しっかり掘り下げていったなあ」と思わせる卒業生は社会に出てからも高い評価を得て技術者や科学者として存分に活躍しています.自分の考えをしっかりと突き詰めて吟味し,裏付けになる良質のデータを取る大切さを感じとる「感性」が育ったからでしょうか.有意義に過ごした時間や労力は決して裏切らないものです.一方で,自分で何かをする意志が芽生えなければ競争の世界にはエントリできないので有意義な在学期間を過ごすのは難しいでしょう.

だいぶ前に何かの機会に知っただけで出典を覚えていませんが、世の中には,研究室での活動に没頭した結果,何かをつかむ体験をした学生を「相転移を起こした」と表現する方もおられるようです.絶妙な言葉の選択だと思いました.人一倍打ち込んで楽しんでみるという経験は,知らず知らずのうちに,自分の視界や意識をそれまでとは質的に違う世界にまで引き上げてくれます.私たちの研究室がそのような「相転移」を経験する場になることを願っています.